調停、審判、和解、判決などの裁判所の手続により離婚した場合であっても、その後、離婚届を役所に提出しなければ、離婚したことは戸籍に反映されません。
そこで、このような裁判離婚により離婚届を役所に提出する際の必要書類、記入方法、記入内容等について、最新の内容をご説明いたします。
なお、協議離婚の場合については、次のページをご覧ください。離婚届の書き方(協議離婚の場合)
1 通常は、次の方が離婚届を提出することになります。
届出人 | 届出をする時期 | |
調停離婚の場合 | 離婚調停を申し立てた申立人 | 調停が成立した日(この日が離婚した日になります)を含めて10日以内 |
和解離婚の場合 | 離婚訴訟を提起した原告 | 和解が成立した日(この日が離婚した日になります)を含めて10日以内 |
判決離婚の場合 | 離婚訴訟を提起した原告 | 判決が確定した日(この日が離婚した日になります)を含めて10日以内 |
なお、届出をする時期については、10日を経過しても届出をすることは可能です。
この場合は、「戸籍届出期間経過通知書」という書類を提出することになります。用紙は役場の窓口にあります。
2 上記の方が、届出期間である10日以内に離婚届を提出しない場合には、相手方が離婚届を提出することも可能です。
3 また、調停条項や和解条項の中で、「相手方の申し出により離婚をする」と定めた場合には、初めから相手方の方で離婚届を提出することができます。
これは、例えば、夫が離婚調停を申し立て、妻が相手方となっている場合で、離婚すると妻が戸籍から抜けることになるような場合、妻が離婚届を提出した方が、妻が新しい戸籍を作成したりするのにスムーズと考えられます。
そのため、このような場合には、調停条項や和解条項の中にこのような条項を入れることがあります。
提出先は次のどちらかです。
1 届出人の本籍地がある役所
2 届出人の所在地の役所
「所在地」とされているため、住民票上の住所がある役所に限られません。
なお、2の役所に提出する場合、これまでは戸籍謄本の提出が必要とされていました。
しかし、戸籍法の改正により、令和6年3月1日からは戸籍謄本の提出は原則不要となりました。
裁判離婚により離婚届を提出する場合、役所には以下の書類を提出する必要があります。
1 離婚届
裁判離婚の場合でも、役所に離婚届を提出しなければなりません。
もっとも、相手配偶者の署名押印や、証人欄の記載は不要であるため、届出をされる方お一人で作成することができます。
離婚届の入手方法としては、役所の窓口でもらう方法以外に、ダウンロードして印刷する方法もあります。
大阪市などでは、ホームページから離婚届をダウンロードすることが可能です。
印刷する際には、A3の用紙に印刷してください。
大阪市のホームページ
https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000369802.html
なお、離婚届の様式は全国共通です。
もっとも、市町村によって欄外の記載が異なる場合があります。
そのため、提出先の市町村とは異なる市町村のホームページから離婚届をダウンロードする場合には、提出先の市町村に確認した方がよいかもしれません。
2 下記の調停調書など
下記①の謄本の提出が必要です。
また、審判離婚及び判決離婚の場合には、②の確定証明書も必要となります。
調停離婚の場合 | ①調停調書の謄本 |
---|---|
和解離婚の場合 | ①和解調書の謄本 |
審判離婚の場合 |
①審判書の謄本 |
判決離婚の場合 |
①判決書の謄本 |
①の謄本には、戸籍届出用として作成される省略謄本というものもあります。
この省略謄本には、離婚することと親権者のみが記載されており、財産分与や養育費など戸籍に関係ないことについては記載が省略されています。
②の確定証明書とは、審判や判決が確定したことを裁判所が証明する書類です。
確定証明書は、審判や判決が確定した後、裁判所に申請することによりもらうことができます。
申請方法については、大阪家庭裁判所であれば、大阪家庭裁判所のホームページの「家事事件の各種申請で使う書式について」の中で、「各種証明書の申請書」として、記載例とともに詳しく記載されています。
※ 上記1、2の他に、これまでは、本籍地でない役所に提出する場合、戸籍謄本の提出が必要とされていました。
しかし、戸籍法の改正により、令和6年3月1日からは戸籍謄本の提出は原則不要となりました。
1 筆記用具
鉛筆や、消えやすいボールペン、インクでは書かないでください。
2 印鑑について
印鑑については、2021年9月1日から離婚届への押印が不要となったため、現在は不要です。
もっとも、任意で押印することは構いません。
押印する場合には、実印である必要はなく、認印でも大丈夫ですが、押印が必要だった頃はシャチハタは不可とされていました。
3 訂正方法
以前は離婚届に押印しなければならなかったため、訂正する場合には、二重線を引いた上に訂正印を押していました。
また、離婚届の欄外に、訂正のための捨印欄が設けられている場合もありました。
これに対して、現在はそもそも押印が不要となったため、市区町村によってホームページの記載は異なりますが、例えば福岡市のホームページでは、訂正が生じた場合、訂正箇所に署名もしくは欄外に署名してくださいとされており、離婚届の欄外に捨て署名欄が設けられています。
もっとも、訂正方法については特に何も記載されていない市区町村が多いため、離婚届を提出する市区町村にご確認いただければと思います。
離婚届に書く内容は次のとおりです。
離婚届を提出する日を記入してください。
届出先の市区町村を記入してください。
(堺市北区に届出する場合には「堺市北区長 殿」、大阪狭山市に届出する場合には「大阪狭山市長 殿」など)
夫と妻それぞれの、氏名、ふりがな、生年月日を記入してください。
住民登録をしている、住民票上の住所を書いてください。
世帯主の氏名も、住民票に記載されている世帯主を書いてください。
婚姻中の本籍(現在の本籍)を記入してください。
筆頭者の氏名については、戸籍謄本のはじめに記載されている人の氏名を書いてください。
本籍地が分からない場合、本籍地を確認する方法としては、住民票を取ってそこに本籍地を記載してもらう方法が考えられます。
夫と妻それぞれについて、父母の氏名と続き柄(長男、二女など)を書いてください。
養子縁組をされている場合には、養父、養母の氏名も書いてください。
父母や養父母が既に亡くなられている場合にも記入してください。
調停離婚の場合 |
調停で離婚が成立した日を書いてください。 |
審判離婚の場合 |
審判が確定した日を書いてください。 |
和解離婚の場合 |
和解が成立した日を書いてください。 |
判決離婚の場合 |
判決が確定した日を書いてください。 |
「婚姻前の氏にもどる者」とは、結婚により苗字が変わった方のことです(一般的には妻の場合が多いと思います)。
結婚により苗字が変わった方は、離婚により現在の戸籍を抜けることになりますので、今後の戸籍について次の①~③から選ぶことになります。
①結婚前のもとの戸籍に戻り、旧姓を使う
②新しい戸籍を作り、旧姓を使う
③新しい戸籍を作り、現在の苗字をそのまま使う
①~③のいずれを選ぶかによって、「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄の記載内容が変わってきます。
①結婚前のもとの戸籍に戻り、旧姓を使う場合
「もとの戸籍にもどる」にチェックを入れ、結婚前のもとの戸籍の本籍地と、その筆頭者の氏名(一般的には父の氏名となる場合が多いと思います)を記入します。
ただし、戻る戸籍に記載されている方が全員亡くなっている場合など全員除籍になっている場合には、もとの戸籍に戻ることはできないため、②または③の方法によることになります。
また、戸籍には「三代戸籍禁止の原則」というものがあるため、1つの戸籍に三代(父母、本人、本人の子)が一緒に入ることはできません。
そのため、結婚により苗字が変わった方がもとの戸籍に戻った場合、その戸籍にその方の子どもを入れることはできないことになります。
そこで、離婚により子どもの親権者になった場合、その子どもを一緒の戸籍に入れるためには、②または③の方法によることになります。
なお、①の結婚前のもとの戸籍に戻り、旧姓を使うことにした場合でも、離婚の日から3か月以内に、結婚当時の苗字を使う旨の届出をした場合には、③と同じように新しい戸籍を作り、結婚当時の苗字をそのまま使うことができます。
このような届出のことを、「離婚の際に称していた氏を称する届」(婚氏続称(こんしぞくしょう)の届出)といいます。
この届出書は役所にあります。
②新しい戸籍を作り、旧姓を使う場合
「新しい戸籍をつくる」にチェックを入れ、新しく作る戸籍の本籍地にする場所と、その筆頭者となるご自身の旧姓での氏名を記入します。
なお、新しく作る戸籍の本籍地は、日本国内に存在する地番であれば、どこでも可能とされています。
③新しい戸籍を作り、現在の苗字をそのまま使う場合
離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」の欄には何も記入しないでください。
この場合には、離婚届とは別に、「離婚の際に称していた氏を称する届」(婚氏続称(こんしぞくしょう)の届出)を提出する必要があります。
この届出書は役所にあります。
夫婦の間に未成年(18歳未満)の子がいる場合は、調停、和解、審判、判決の内容にしたがって、夫が親権者になる子については「夫が親権を行う子」の欄に、妻が親権者になる子については「妻が親権を行う子」の欄に、子の氏名をフルネームで記入します。
なお、親権者を定めるだけでは子どもの戸籍は変わりませんので、子どもの苗字を変えるためには、裁判所に申立てをして、裁判所の許可を得ることが必要となります。
この場合の手続については、離婚後の子どもの戸籍や苗字の変更をご参照ください。
未成年の子が、離婚する夫または妻の実子ではなく、養子縁組により親子関係にある場合、その親子関係については、離縁しないと解消されません。
同居を始めたときの年月は、結婚式をあげた年月または同居を始めた年月のうち早い方を書いてください。
そもそも同居していない場合には、全て空欄のままで構いません。
別居していない場合には、別居した年月欄は空欄にしておいてください。
既に夫婦が別居している場合には、別居前の、最後に同居していたときの住民票上の住所を記入してください。
「別居する前の世帯のおもな仕事」については、夫婦が同居していた当時、世帯の主な収入源になっていた仕事の□にチェックを入れてください。
1~6までの具体的な分類の内容は次のとおりです。
1 「農業だけまたは農業とその他の仕事を持っている世帯」
→専業農家、兼業農家など
2 「自由業・商工業・サービス業等を個人で経営している世帯」
→自由業、商工業、サービス業などの個人事業主や自営業者
3 「企業・個人商店等(官公庁は除く)の常用勤労者世帯で勤め先の従業者数が1人から99人までの世帯(日々または1年未満の契約の雇用者は5)」
→従業員数1人~99人までの会社、団体、法人、個人商店等の正社員、契約期間が1年以上の契約社員など
4 「3にあてはまらない常用勤労者世帯及び会社団体の役員の世帯(日々または1年未満の契約の雇用者は5)」
→従業員数100人以上の会社、団体、法人、個人商店等の正社員や、契約期間が1年以上の契約社員
また、公務員、会社役員、団体役員など
5 「1から4にあてはまらないその他の仕事をしている者のいる世帯」
→会社、団体、法人、個人商店等に勤めている方や公務員のうち、契約期間が1年未満の方など
6 「仕事をしている者のいない世帯」
夫婦の職業欄は、国勢調査の年の4月1日~翌年3月31日までに離婚届を提出をするときだけ書いてください。
なお、国勢調査は5年ごとに行われ、直近では2020年に行われました。次回は2025年に行われる予定です。
届出人ご本人が、必ず自署で氏名を書いてください。
氏名は婚姻中の氏名(現在の氏名)を書いてください。
印鑑については、現在は不要とされていますが、任意で押印しても構いません。
相手配偶者の署名や押印は不要です。
離婚届の書式によって記載欄が異なりますが、日中に連絡のとれる電話番号を記入してください。
裁判離婚の場合、証人欄を書く必要はありません。
休日や役所の時間外に離婚届を提出した場合、後日役所の方で確認して、不備がなければ受理されることになります。
役所の窓口に来ていない配偶者に対しては、離婚届が受理された後遅滞なく、その役所から、離婚届を受理したことが通知されます(戸籍法27条の2第2項)。
通知方法については、上記配偶者の住民票上の住所に、転送不要郵便等で送付されます(戸籍法施行規則第53条の3)。
離婚届を提出した後、離婚したことがすぐに戸籍謄本に記載されるわけではなく、一定期間の時間がかかります。
具体的にどのくらいの日数がかかるかについては、市区町村によっても異なりますが、一般的には、離婚届の提出後、1週間から2週間前後かかるとされている場合が多いように思います。